知られざる歯科保険診療の影 ~保険診療の功と罪~

健康保険証は医療機関への入場券

体調が悪くなり、お医者さんへ行く。
この時必ず持参するものが健康保険証です。
このため皆さんにとってこの健康保険証はいわば医療機関への入場券のようなものとなっています。
通院した医療機関にこの健康保険証を提示すれば、国が定めた健康保険制度に基づく保険診療を受診することができます。
費用は全国一律で、処置された内容によって定められているため、安心して治療を受けることができます。

この制度は、憲法第25条「すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」に基づいて、創設された制度であり、長期にわたりその制度に慣れ親しんでしまっているため、多くの国民はこの制度の利用に対しなんら疑問点を持たなくなっています。

健康保険制度の良い点

健康保険制度の良い点は、病気になった時に受ける医療サービスを安価で受診することができることです。
この制度は相互扶助という概念をベースとして作られています。
たとえばこの制度に10人の人が参加しているとしましょう。
10人が毎月1,000円の保険料を支払ったとすれば10,000円の医療費の支払い原資が確保されます。もしこのうち一人が病気になり、その時の治療費が10,000円必要だったとします。すると10人から集めた総額の保険料10,000円でこの費用が賄われます。
一人でこの資金を使うことになりますが10人同時に病気になることはないため、翌月にはほかの人が病気になったとしても順繰りにこの費用でみんなの治療費を支払うことができるわけです。
実際には税金からも費用補てんが行われており、このような仕組みによって医療サービスに支払う費用がきわめて安く済むというのが良い点です。

健康保険制度で歯が悪くなる理由

しかしこの制度には利用者に見えていない欠点があります。
それは歯科治療の場合この制度を利用している人で歯を失うことなく守り続けることができた人がほとんどいないということです。
それはこの制度の2つの欠陥による3つの問題によるものです。

1つ目の欠陥は、制度による治療費用設定があまりにも安価であるということです。
歯科医療サービスの提供者である歯科医院はボランティアではなく経営を行っているわけですから、この費用設定の範囲で採算性のある対応を迫られます。
その結果短時間で治療を終えなければならないという事情が生じ、結果として医療の質の低下という1つ目の問題を招きます。
またこのことは患者さんとの会話の時間も生産性に寄与しないという理由から奪ってしまうこととなり、患者さんの期待の確認や正しい情報が提供できず、患者中心の医療展開ができないという2つ目の問題も引き起こします。

2つ目の欠陥は、医療の質の管理ができない仕組みであるということです。
歯科医師が提供した医療の質が医療水準からみた合格点に達していなかったとしても、処置をした歯科医師がこれでOKと判断すれば処置は完了します。
そして処置を行ったという事実に対して支払いが行われるという仕組みです。
つまり医療の質が良かろうが悪かろうがそのチェックはなく、質の低下に歯止めがかからないという3つ目の問題です。

ですからこのような3つの問題により社会保険制度による歯科治療では、質を問わな
い大量生産薄利多売型のビジネスモデルとなり、歯を守るという結果を出せなくなって
いるのです。

患者としての選択

保険制度による歯科医療サービスを患者として選択する場合は、この制度の良い点と悪い点を正しく理解して選択する必要があります。

もし自分自身の歯を失うことなく快適に使う、あるいは失った機能や美しさを満足できるよう取戻したい時は、治療に先立ち妥協せず納得できるまで歯科医師とじっくり相談することが大切です。

 

美しい人生のすすめ ~あなたを生まれ変わらせる口元と笑顔~

口元の悩み

人として豊かな人生を謳歌するためには、ほかの人との交流が欠かせません。
無人島に一人で生活するならいざ知らず、現代社会に生きる上では、自分の意見や気持ちを人に伝えるのは「口」の役割であり、自信をもって人前で大きな口を開けて笑えるのも、「美しい白い歯」があってのことです。
明眸皓歯とは美人のたとえであり、白く整った歯が美人の条件とされているように、その口元が他人に与える印象は代えがたいものがあります。
しかしこの口に問題があり、笑う時には口元を隠し、写真撮影の時には笑顔を見せず、必ず写真の端の方に写っている、こんな控えめな人生を過ごしている方がおられるのも事実です。
このような方は是非ともこの口元の悩みを解消されることから取り組まれるとよいでしょう。

60歳から歯並びを治す

2人の子供を持ち子育てに奮闘する母親でありながら、ご自身の仕事も続けてこられてきたTさんは58歳でした。

「もうすぐ定年だし、子育ても終わりました。今度は自分のために少し手をかけてあげたいんです。ずっと気になっていた歯並びを治したい」

こんな思いでお越しになられました。

「今からでも歯並びを治す矯正治療はできます」

この言葉を頼りに矯正治療を始めた約1年後、歯の位置は整い、気になっていた出っ歯もまったくわからなくなりました。
すると、笑顔に明るさが生まれ、より若々しく変化されたんです。
着こなす洋服の雰囲気も変化し、明るい色を好むようになられました。
「若返ったでしょ」とおっしゃるTさんは、素敵な女性に変身されたのだと感じました。

いつになっても若々しくありたい、これは女性の願いなんでしょうね。

美しく自然な歯を求めて

30代後半のBさんは陽気で活動的な女性です。

仕事のオフにはバイクでツーリングを楽しんでおられます。
しかし彼女にも悩みが…。

「写真を撮るとき笑顔で写すと口元が暗くなってしまうんです。だからどうしても笑えなくて…。」

よく検査をしてみると、小さな虫歯を樹脂の材料で修復した前歯では、その樹脂の材料が変色し歯の色が暗くなっていたのでした。
また、手入れの不足から歯垢の除去が不十分で、歯茎が炎症を起こしていました。
多くの方は歯の色こそが問題とお考えですが、実は歯ぐきに炎症があり、歯周病になっていると口元は暗くなってしまいます。

歯磨きを見直し、歯ぐきを引き締め美しいピンク色の歯ぐきを取り戻したうえで、金属を使わない人工ダイアモンドのジルコニアを用いたオールセラミックスの冠を装着することで明るくきれいな口元を回復されました。

「まだまだいける!」

これが治療後のNさんのコメントでした。

一度きりの人生へチャレンジ!

人は自らの人生をイメージ通りに過ごしたいと考えます。
つまり自己実現に対し強い欲求があるのです。
しかしさまざまな事情が自己実現を妨げてしまい、人生すべてがイメージ通りに展開することはありません。

ただ、このような状況をどのように捉えるかで人生は変わります。

ある年齢でできなかったことでも、事情が変わった時期を迎えたときに取り戻すことはできるのです。
そして口元の問題もこの一つと考えることができます。自信の持てる口元に変化させていくことにより、ほかの事柄に対しても積極性が出てきます。
このような効果が前向きな人格を生み出し、人生を変えることにつながるのかもしれませんね。

もしあなたがお口や歯の事で悩み、「仕方がない」「諦めよう」などと後ろ向きに物事を考えるパターンに陥っているとしたならば、この考え方を捨て、前向きに取り組んでみるのはいかがでしょうか?

ピンピンコロリは噛める口から ~第3の人生を楽しむために~

第3の人生への準備

第1の人生は生まれてから結婚するまで、第2の人生は結婚後子供が自立するまであるいは仕事をリタイアするまで、と言われます。
そして、これらの期間を乗り越え、自分らしい時間を謳歌するのが第3の人生です。
しかし気が付けば、若いころのような体力がなく無理がきかない、新たなことを習得するにも時間がかかってしまう、思うようにてきぱきと動けないなど、いろいろと悩みは尽きません。
今や平均寿命は男性80歳女性86歳、いま元気な60歳以上の方の平均余命は90歳にまで伸びています。ですから人生の終焉が訪れるまでにはまだまだ長い年月があるということです。
この間最後の時間を迎えるまで活躍し続けるのが「歯」です。今回はこの歯のとの関係についてご紹介します。

ピンピンコロリと口の健康

いくら寿命が長くなったからと言って、ただ単に生きているだけというのでは意味がありません。もし寝たきりになったり認知症になれば、本人の意思とは異なり周囲に大きな負担をかけてしまいます。
このため、できれば「ピンピンコロリ」の人生であってほしいと誰もが願っています。
平均余命が90歳を超える時代へと入り、この寿命の中身・質を考えなくてはならない時期となってきました。
そこで注目すべきポイントは「健康余命」という概念です。健康余命とは平均余命から寝たきりや認知症になってからの平均年数(不健康余命)を差し引いた年数を言います。平均余命が健康余命と同じ人、つまり不健康余命の期間がない方がピンピンコロリで人生を終えた方ということになります。この健康余命では、お口の健康と一定の関係があることがわかっています。
右上のグラフをご覧いただければわかりますが、歯がしっかりと残っていてよく噛める人の方が平均余命が長く、不健康余命が短いという結果です。
逆に歯が無くなり、よく噛めない人は、平均余命が短く、また不健康余命が長いという結果となっています。

噛む能力を守る

歯周病や虫歯は病気そのものが科学的に解明され、これらの病気から歯を守ることはさほど困難ではなくなってきました。
しかしながら歯が残っているからよく噛めるということは言えません。

よく噛めるためには残っている歯が口という機能を正しく維持していなければならないからです。しっかりと噛むためには、口という臓器の構成要素である、「顎関節」「筋肉」「上下の歯の接触関係(かみ合わせ)」「歯周組織(歯を支える歯ぐきと骨)」そして「頑丈な歯」のすべてに調和がとれた状態で、健康でなくてはいけません。
そのためには、まずこれらの状態を正しくチェックし、問題がないかを確かめることが必要となるのです。
もし問題が見つかれば、出来るだけ早く問題を解決し、まずは健康な状態に整えることが賢明です。このためには、かかりつけの先生に申し出て、このような要素について総合的な診査をしていただくことが必要です。
もしそのようなかかりつけの先生がいない場合は、デンタルドック(歯の人間ドック)を受診することもよいでしょう。

「ピンピンコロリ」を目指すならば、まずは「お口の健康管理」という認識を持ちましう。そうすれば健康余命が伸び、豊かな第3の人生を楽しんでいただけます。

 

生涯入れ歯にならないために ~歯を失う4つの病気を正しく理解しよう~

歯は悪くならない???

歯は正しく管理すれば悪くなることはありません。それどころか生涯にわたり入れ歯になることはなく、使い続けることができます。
そのためには歯を失わないことが大切であり、歯を失うに至らしめる病気が発生しなければよいのです。

この歯を失うに至らしめる病気は4つしかありません。
ですから、この4つの病気を正しく理解し、しっかりと管理を行うことが大切なのです。

病気① むし歯
歯自体が壊れていく病気を「むし歯」と呼びます。これはお口の中に棲みついている細菌が原因です。この細菌は口の中に入った糖分を原料として乳酸という酸を作ります。この酸が歯を溶かしていく病気の事です。歯のかみ合わせの面の溝や歯と歯の間部分から発生する事が多い病気です。
勝手に治ることはありません。
このむし歯から歯を守る方策は、細菌の量を問題が発生しない量にまで少なくすか、あるいは原料となる糖分の供給を減らすことです。
具体的には、歯磨きをしっかりと行うことと甘い物の食べ方に注意をすることとなります。これ以外では歯自体のむし歯に対する抵抗力を高めるために、フッ素を積極的に応用する方法も有ります。
あなたに合った予防の方法は歯科医院で指導してもらうことができます。

病気② 歯周病
歯を支える歯ぐきと骨が壊れる病気を「歯周病」と呼びます。口の中に棲みついている細菌が原因ですが、むし歯の原因菌とは異なります。
この細菌は歯と歯ぐきの境目の歯ぐきの溝の中に棲みつき、慢性的に炎症を起こさせ、この炎症により歯ぐきと骨が壊れます。
むし歯同様に勝手に治ることはなく、この細菌を除去することが病気の予防の基本となります。歯ぐきの溝の深さが3㎜程度までならば、自分自身の管理によりこの細菌を確実に除去することが可能ですが、4㎜を超える歯ぐきの溝の深さがある時は、専門家の手助けが必要となります。

病気③ 良くない治療
むし歯や歯周病に侵された所は自然に治ることがないため、何らかの治療により問題解決を行います。
しかしこの治療が正しく行われていない場合、その治療が原因となり新たな虫歯や歯周病を引き起こしたり、本来使える歯の寿命を短くしたりします。これが「良くない治療で、歯を失う病気の一つと考えることができます。
具体的には、適合の精度が低い治療物や不完全な歯の根の治療などです。治療における重要なポイントは、精度が高く、口全体としてバランス良く治療がなされていることです。
このためには、治療に用いる材料に良い材質を選ぶこと、そして治療後には処置状態の確認をすることが効果的です。

病気④ かみ合わせ
上下の歯の接触の仕方が悪く、歯に無理な力が加わって歯が壊れるのが「かみ合わせ」の病気です。
口という臓器はあごの関節、あごを動かす筋肉、そして上下の歯によって構成される臓器です。この臓器は非常に敏感で30ミクロン(1㎜の1000分の30)の厚みでも敏感に感じる事が出来ます。
このため正しい位置で上下の歯が接触しない場合や、円滑な下あごの動きを妨げるようなすり合わせの状態が歯のかみ合わせ面にあると、歯に無理な力が加わり、歯が欠けたり、グラグラになったり、肩こりや顎関節の痛みなどを引き起こしたりします。
歯科医師が適切なかみ合わせの調整を行うことによりこの病気から歯を守ることができます。

病気を正しく確認すること

歯を失わないためには、これら4つの病気が発生していないかどうかを正しく確認することが不可欠です。
ですから治療に先駆け精密な検査を行い、この様子を見極め、効率的・効果的に対処してもらう事が必要となるのです。
自分のお口の様子を正しく確認されたい方にはデンタルドックが有効です。

歯を失わないための治療の手順 ~歯科治療における原因療法~

 歯が悪くならない、
これって歯性の問題なの???

 歯を悪くしたくない
 入れ歯にはなりたくない
 しっかりとおいしく食事がしたい
 美しい口元で若々しくいたい

このような思いはすべての患者さんがお持ちです。しかしその期待どおりに歯を使い続けている人とそうではなく何度も歯医者さんに通っても歯が悪くなり続けている人もいます。
「歯性が悪いんだ」と諦めている方も多くおられるようですが、歯を悪くせず快適に使い
続けている人とはいったい何が違うのでしょうか?

歯を守る「原因療法」による歯科治療

従来の歯科医療は、悪くなった歯を治す、歯が無くなったところに歯を入れる、
といった修理を行うことが治療の中心でした。
このように発生した問題の改善を行うことにポイントを置いた治療(症状を治す)を対症療法と言います。
これでは歯の修理をしなくてはならなくなった原因が取り除けていないため、また次の問題が発生し、これが繰り返されると歯を失うことになります。
これに対し歯を悪くせず快適に使い続けている方では、この歯を失う病気の原因に
着目し、その原因を取り除くことから始めています。
これが歯科治療における原因療法で、この取り組みが歯を健康に保ってくれます。
ではこの原因療法は、どのような手順で進められるのでしょうか?

① 精密な検査
まず最初にすることは、歯を削ることではなく、現在のお口の中にどのような病気が発生しているのかを正しく認識することであり、そのために精密な検査をします。
歯を失う病気には、虫歯、歯周病、不良な治療、かみ合わせの問題という4つの種類がありますが、これらの病気を正しく理解することが基本です。

② 原因の除去
問題が明確になれば、病気の原因を取り除くことから始めます。虫歯や歯周病は口の中の細菌が原因であり、この細菌を取り除くにはご自身の歯磨き習慣を改善することと専門家によるクリーニングが必要です。これは予防プログラムとして展開されます。
また、かみ合わせの問題は歯に加わる力の調整であり、正しい顎関節の位置で均等に適正な力が加わるようにしなければなりません。これは予防咬合調整として展開されます。

③ 総合治療
次に行われるのが治療となります。
治療では部分的な補修をするのではなく、お口全体で一つの臓器であるという考えのもとに、バランスを整えながら全体にわたる治療を同時に行います。
これを総合治療といます。総合治療では、不良な治療が発生しないよう良質の材料を用い精密な治療が行われます。

④ メンテナンス
総合治療により健康なお口が回復できたならば、その状態を維持する取り組みを行います。
これがメンテナンスです。
患者さんの様子に合わせて個別のプログラムを計画し、年に2~6回程度のペースで実施されます。
歯が悪くならない方というのは、このような手順の原因療法による医療を受診されているのです。

はっきりさせよう治療計画 ~あなたの口はどうなるの?~

治療前に必ず確認すること!

お任せ医療・お仕着せの医療が当たり前のようになっている日本の保険制度による
歯科治療ですが、患者さん中心の医療の時代を迎えた現在では、どのような治療で
あってもしっかりと治療の前にその内容を確認することが必要です。

今回は、治療前に確認すべき項目とその内容について考えて見ましょう。

① 治療の方法
病気の診断の報告を受けた後、それに引き続き治療の方法をどのように選択するかは重要なポイントで、一つの病気に対してもいくつかの治療方法があり、それぞれ
の方法には利点と欠点があります。また、病気によっては治せる限界もあります。
ですからさまざまな方法の中から、あなた自身の希望に合った結果につながるであろ
う治療方法を見つけ、自分自身で納得して選択されるこ
とが必要です。

② 治療のスケジュール
治療の方法を決定するに当たっては、時間や期間の問題も重要です。
たとえば歯医者さんは嫌いだから一回の治療時間が長いことは耐えられないという方は、1回の処置時間を短くし、その代わりに通院回数を増やし治療することになります。しかし仕事が忙しく時間が取れない方や、効率よく治療を進め早く終わらせたいという方の場合には、一回当たりの治療時間を長く確保し集中的に治療して通院回数を
減らすことが必要です。
ちなみに一回の治療時間を3時間以上、場合によっては1日をかけて、数回の来院で治療を完了させることができる場合もあります。このことにより治療が完了するまでの期間を短くすることもできるのです。これらのことは事前に主治医と十分に相談し決めることが賢明でしょう。

③ 治療の費用
歯科の治療には、腫れた歯ぐきや歯の痛みを取り除くといったいわゆる病気を治す
処置と、虫歯で空いた穴を埋めたり失った歯を新たに作るといった壊れた機能を取り
戻す治療とがあります。

そしてそれらの処置を行う場合、その手順やその時に使う器具・機械、またその治療
方法によってもさまざまな方法が選択できます。

これらをどのように組み合わせて治療を行うかということで治療費用は決まります。
健康保険だけではできない方法でも、歯にとっては良い結果をもたらす方法もあり、
これらを比較検討して治療方法を決定し、事前にその治療費用を明確にしておくことも重要です。

今、日本の歯科医療に欠けているものr

お口の中に発生する病気は、生活習慣病であり、また慢性的に進行する病気です。
しかしその治療に当たっては、単純に機能を回復するだけではなく、その回復の仕
方において個人個人の好みが大きく表れてきます。
一般的な医科の治療では、病名に応じて一定の治療方法で展開されるのに対し、
歯科の治療では治療手技や手順また治療に用いる材料において様々な選択方法が
あるため、治療方法は多種多様になります。

たとえば1本の歯を失ったとしましょう。その失った歯への対処には

 ①そのまま放置する

 ②取り外し式の入れ歯を用いる

 ③失った歯の両側の歯に冠を入れてその歯をつなぐブリッジとする

 ④失った部分に人工歯根【インプラント】を入れる

という方針があり、それぞれの方法において異なる設計と材料の選択があり、
具体的な治療方法は10種類以上にもなります。

この様な選択肢の中から自分にあったものを選ばなくてはならないわけであり、
その手順をどなたでも無理なくできるということが必要です。

しかしながら現在の日本の歯科医療ではこのような選択をうまく行えない状況に
なっています。

自分にあったより良い歯科治療を受けるため、治療にあたってはしっかりとその内容を確認するようにしましょう。

セカンドオピニオンのすすめ ~治療に安心・納得できていますか?~

募る不安

虫歯・歯周病やかみ合わせの問題、病気の名前は知っていても詳しい内容と
なるとわかりません。

さらにその治療法となると詳しいことはわからず、主治医の先生のご指導の下、
その治療を了解して受けるしかありませんでした。

治療が終わっても違和感が残ったり、痛みが消えなかったりと

本当にこれで大丈夫なの? 

治っているの?

こんな不安をお持ちの方が多いのが実情です。
しかし、さらに相談するすべもなく、主治医の先生のアドバイスを頼りに我慢の日々が続いています。

こんな時どうしたらよいのでしょうか?

 

歯を失う4つの病気

口の中にはいろんな病気が起こります。当然癌だって発生します。
しかし生きている間ずっと使い続ける自分の歯を失わないためには、歯を失う病気から歯を守ることがポイントとなります。

この歯を失う病気には4つの種類があり、それが単独あるいは複数で絡み合いながら
発生しています。
4つの病気とは、

①歯自体が壊れる虫歯

②歯を支える歯茎と骨が壊れる歯周病

③規定通りに正しく治療ができていない不良な治療

④上下の歯が正しい位置でかみ合っていなかったりスムーズに働けな
いために歯が壊れるかみ合わせの病気

です。
これらの病気を正しく確認し、絡み合った紐をほどくようにすべての病気に対し
取り組まなくては、病気による症状は改善せず、一生歯を使うことはできません。

歯を失う4つの病気

歯科医師が違うとこれらの4つの病気の診断とその治療方法は変わります。
これは歯科医師という立場が互いに独立しており、それぞれが自由な裁量権をもつことが法律により定められていることに由来します。
ですから、

A先生は「この歯はだめなので抜くしかない」
と診断し治療計画を決めたとしても、

B先生では「いろんな治療方法を組み合わせ、歯を抜かずに治療する」
という診断と治療計画を提示されることになるのです。

これはどちらかが正しいのではなく、どちらも正しいわけで、それぞれの診断と
治療計画ではそれぞれに利点と欠点があることを理解しなくてはなりません。

患者さんはこれらの複数の診断と治療計画を比較検討し、そのうえで自分に
合った方法を選択しなくてはならないのです。

セカンドオピニオンのすすめ

このように複数の意見を比較検討し自分に合った方針を決定するために行う手順を
セカンドオピニオンと呼びます。

患者さんが治療方法を選択するには納得できるまで主治医と相談して決めることが重要です。
しかし一人の先生の診断に頼っては、ほかの治療方法を選択するチャンスが失われてしまうのです。

このため自分の意に反した方法を了承し、不安を残しながら治療を決めなくてはな
らなくなってしまいます。

ですから別の歯科医師の意見を聞いてみて、自分に合った治療方法や納得できない
診断や治療結果に対し、比較検討するわけです。

セカンドオピニオンを受けたからと言って主治医に責められることはありません。
むしろ主治医は積極的にセカンドオピニオンを受けようとする患者さんを応援する
ことが義務付けられています。

たとえば、相談できる専門医を紹介したり、
そのために主治医の先生の持っている診断資料を貸し出したりもします。

デンタルドックを活用しよう

セカンドオピニオンを求める歯科医師が見つからないとき役立つのが
デンタルドックです。
お口の人間ドックであるデンタルドックでは、口の中の詳しい様子を知る
ことができます。

あなたの歯を守るためにデンタルドックを活用してみてはいかがでしょうか?

歯医者さん選びの6つのステップ

患者さんの悩み

「私の病気は治るのか?」

「治療は長持ちするのか?」

「きちんと治してもらえたのか?」

患者さんの不安は絶えません。そしてこの不安の解決方法は、
「良い先生」を探すこととなるのです。

ではこの「良い先生」はどのようにして見つければいいのでしょうか?

「良い先生」には基準がありません。

ある人は技術の高い先生、ある人は良く相談に乗ってくれる先生、
ある人はいつでも診てくれる先生、美しく治してくれる先生、……。
これらをまとめると、あなたの期待を叶えてくれる先生こそが、
あなたにとっての良い先生となります。

自分に合った先生の探し方

自分に合った先生を探すには、先生と十分に話をする必要があります。
あなたが困っていること、期待することをしっかりと伝えることから始めなくてはなりませ
ん。
そのため、新たな歯医者さんに行く場合には、「相談で伺いたい」という予約を行うことが賢明です。

このような予約をすることで歯医者さんも相談にお越しになるのだという意識が生まれ、あなたの話にしっかりと耳を傾けてくれることでしょう。

歯を失わない歯科医療を受診するための6つのステップ

あなたの期待が、

「生涯自分の歯で過ごしたい」

「治した歯は悪くしたくない」

というものであれば、歯医者さん探しはより慎重に行う必要があります。

そこで以下の6つのステップを歯医者さん選びの手順にされるとよいでしょう。

ステップ❶
歯医者さんに相談に行く前にします。自分の歯をどのような状態にしたいのかという
あなたの期待を明確にするステップです。
きれいになりたいとか、○○が食べたいとか、歯を失いたくないとか、難しいことは
必要ありません。
あなたの気持ちを率直に伝えられるよう整理しましょう。

ステップ❷
相談に伺った先生に、あなたの期待を伝えます。話をすれば、相性や話しやすさが
わかります。
また、あなたの期待に対し納得のいく説明をしてもらえるかも大切です。
合わないと感じたときは、再度考えますと言って別の先生を訪問する勇気を
持ちましょう。

ステップ❸
精密検査を受診します。長持ちする治療は、病気の原因から取り除く原因療法で
進められなくてはなりません。
このためにはあなたの歯を失うに至らしめる4つの病気が発生しているかについて
しっかりと確認することが必要であり、そのために精密な検査を受診することが
必要となります。

ステップ❹
検査結果報告を受け、あなたの歯の様子を理解します。知る権利・学習する権利
という患者の権利により、あなたは歯科医師から検査結果をわかりやすく説明して
もらうことができます。
内容が多岐にわたるので、あとで確認ができるように文書で報告書をもらうのが
良いでしょう。

ステップ❺
治療計画を提示してもらいます。あなたの期待を叶えるための治療方法には
様々なものがあります。
あなたの期待に合った治療方法を選ぶため、様々な方法を提案してもらい
比較検討しましょう。
文書により、治療計画内容・治療スケジュール表・治療費用見積書などを
いただくことができます。

ステップ❻
最後はこの先生のこの治療で良いかを自分自身で決めることになります。
迷った場合には、他の治療計画を提案してもらったり、他の先生の意見(セカンドオピニオン)を聞いてみるのもよいでしょう。

一生使う歯の治療を任せるのであれば、
歯医者さん選びも慎重に取り組むことが大切です。

インフォームドコンセントしてますか?

患者中心の医療とは

患者さんは病気やその治療法については素人であるため、どのような治療を受けるのかについてはどうしてもお医者さんの指示に従わざるを得ませんでした。
しかし時代の流れは、患者さんがお医者さんにお任せするのではなく、患者さん自身が主体的に医療を選ぶという時代となっており、これが患者中心の医療です。

この患者中心の医療では、

①患者の期待に沿っている        ②患者の権利が守られている

という2つの要件を満していることが必要です。

患者の期待に沿っているとは、患者さんの「どんな状態にしてほしいのかという希望」に合わせた処置を行うということです。

このためには患者さんは自分の希望を伝え、お医者さんは患者さんの希望を聴き取るという手順を一連の治療の開始の前に行うことが必要です。

歯科治療において患者さんから伝えられる希望には、
希望が叶う・叶わないにかかわらず、

「歯を失いたくない」

「おいしく食事をしたい」

「美しい笑顔でいた」

「入れ歯やいやだ」

などといった事柄が多いようです。

患者の権利が守られているとは、患者さんが自分の期待とおりの結果を手に入れるために必要な医療を受けるために基本的人権として守られるべき事柄となります。

患者の権利とはどんなもの?

1995年第47回世界医師会総会で採択された
「患者の権利に関する世界医師会(WMA)リスボン宣言の改訂」では
この患者の権利について6つの要素を取り上げています。

①医療に対する参加権…医療制度の構築に当たっては、 行政・医療者のみならず
 市民の代表も参加できる

②知る権利と学習する権利…患者は自分の病気や治療法について医療者から
  教えてもらうことができる

③安全な医療を受ける権利…感染の危険などを排除した安全な治療が受診できる

④最善の医療を受ける権利…制度や費用に関わらず、常にその条件下での
ベストの治療を受診できる

⑤平等な医療を受ける権利…人種や地位などに関わらず、平等の内容の治療を
  受診できる

⑥医療における自己決定権…どんな治療受けるかは患者自らが自分の意志で
 決めることができる

これらの権利のうち最も重要とされているのが、医療における自己決定権であり、
これがインフォームドコンセントです。

インフォームドコンセントは患者さんが行うこと

患者さんがインフォームドコンセントを行うに当たってお医者さんは、
患者さんを脅したりや不適当な誘導を行うことなく、専門用語などを使わない
わかりやすい言葉や方法により、

①診断の評価

②提案する治療の目的・方法・予想される期間・期待される効果

③ほかの治療方法

④提案した治療方法で予想される苦痛・深い・危険・副作用を
 説明しなければならない

としています。

つまり、医療に対して知識のない患者さんは、知る権利と学習する権利を使って
お医者さんから情報を入手し、その情報に基づいて自分の期待を叶える医療を選択
するというものです。
お医者さんはこの患者さんの権利を守るための義務を負っているのです。
患者中心の医療を受けるということは、患者さん自らが患者としての権利を行使し、
お医者さんの支援を受けて、自分に合った医療を自己決定するということから
始まるのです。

あなたが自分に合った治療を納得して受診するためには、お医者さんとしっかり
コミュニケーションをとることが必要な時代になっているのです。

患者の権利章典をご存知ですか?

変わりゆく医療

現在のお医者さんは一昔前と変わってきたということを感じておられますか?

昔の医療者は、パターナリズムと呼ばれる医療者としての倫理観を守るように教育
されました。

パターナリズムとは「家父長的温情主義」とか「親権主義」などと訳されますが、
医療の現場では、

「素人の患者さんに医療上の判断をさせることなく、患者にとってより良い結果を専門家である医療者が判断し患者を善意の心によりより良い結果へと導くべき」

というものです。
しかし今やその倫理観は世界的にも否定されました。
現在は、

「医療は患者のものであり、患者自身がどのような医療を受診するかを
自己決定しなくてはならない。医療者はそのための支援をする立場である」

という患者中心の倫理基盤に変化したのです。

アウシュビッツが
患者の権利の起源だった

この患者中心の医療倫理観は第2次世界大戦のアウシュビッツでの反省から
巻き起こったものでした。

アウシュビッツでのユダヤ人大量虐殺は皆さんが御存知のことですが、
そこでは医学の発展という美名のもとに多くの人体実験が行われました。
それは、たとえば治療の効果がどのようなものであるのかを確認する為に、
まだ息のある人体を解剖し様子を観察するといったものでした。

このような戦争での悲惨な教訓から、医療現場でも基本的人権が最も優先されなければならないものという考えが巻き起こり、 患者の権利をどのように守るべきかと
いう議論がなされたのです。

1947年ニュルンベルク綱領に始まり、1981年のリスボン宣言、そして1995年第47回
世界医師会総会で採択された「患者の権利に関する世界医師会(WMA)リスボン宣言の改訂」において、守られるべき患者の権利の内容が明確にされました。

そしてその内容は病院では必ず掲示されている「患者の権利章典」として多くの人の目に留まるようになっています。

患者の権利章典

大きな病院に行けばその待合室には必ず額に入った「患者の権利章典」を見ることができますし、ホームページからも閲覧できます。

患者の権利章典とは、医療者は患者さんの権利をどのように守ろうとしているのかを
患者さんに明確に意思表示し、患者さんに対する医療者としての心構えを宣言し ています。

ですから詳しくその内容を読み取り、患者さんはそこに宣言された内容を自らの権利として行使することが大切となります。

あなたの医療機関選びの目印になるかもしれませんね。

患者の権利章典