あなたの歯を壊す咬合病 ~自己診断で咬合病から歯を守ろう~

咬合病とは

咬合病とは咬み合わせの不具合により起こる様々な病的状態の事で、食事のとき以外に強く噛みしめたり歯ぎしりなどをして歯に過剰な負担をかけ歯を壊してしまう病気の総称です。

口の中の状態からとらえたこの病気は、適切な咬み合わせが確保されていない場合に発症する病気であり、これらの問題を改善することで解決が可能です。
しかしながら自律神経の問題など全身の状態が悪いことによっても発症するため対処が複雑になっています。
口の中に発症する虫歯や歯周病は細菌が原因であり、適切な管理を行えばこの病気を防ぎ、歯を守ることができますが、咬合病は自己管理では改善できない問題です。

このため早期に発見し専門医に委ねなくてはなりません。
そこで今回はあなたがこの咬合病の問題に侵されていないかの見分け方をお知らせします。

歯の磨り減り、痛み、歯が割れる

咬合病では上下の歯を強く接触させることにより歯を磨り減らします。

このため歯の表面のエナメル質が薄くなりやがては失われ、エナメル質よりもやわらかい象牙質が露出してしまうことで、歯の磨り減りだけでなく、知覚過敏や咬み合わせたときの痛みを引き起こします。

磨り減りによりエナメル質が薄くなり歯が割れやすくなるのも病状が進行した症状です。

奥歯の磨り減りや前歯が水平に切ったような磨り減り状態になること、また歯の先端部が欠けてギザギザになること、歯と歯ぐきの境目が欠けてしまうことなどがあれば咬合病を疑います。

歯周病が治らない

歯に加わる強い力は絶えず歯を揺らすように作用します。

歯周病では炎症により歯を支える骨が失われますが、歯周病単独の問題であれば適切な処置と細菌を取り除くことで炎症が治まれば歯の揺れは止まります。
しかし歯周病の処置を適切に行ったにもかかわらず歯の揺れが止まらず、歯周病が進行するときは、咬合病が併発していることを疑います。

顎がカクカク鳴る、口が開かない

顎関節で音がしたり、口が開きにくくなる病気を顎関節症と言います。

顎関節症では顎関節内にある関節円板の位置がずれていたり、関節自体に障がいが発生したりしていますが、これは適正な位置で上下の歯が正しく接触していないことによります。
つまり、顎関節症は咬合病の結果として発症するのです。

肩こりや頭痛

咬合病で食いしばりや歯ぎしりを行うと口に関係する筋肉が異常に緊張し痛みを発するようになります。
多くの場合の頭痛は頭がい骨表面の筋肉の痛みで、過緊張により筋肉に疲れが溜まった状態です。
肩こりも同様で適切な位置で咬みあわないと顎の位置が不安定となり、頭を支える肩から首にかけての筋肉に疲労が溜まり、肩こりとなります。

肩こりや頭痛に悩む人は咬合病のチェックを受けましょう。

情緒が不安定

咬み合わせは非常に繊細で、30ミクロン(1ミリの1000分の30)の違いを識別します。

咬み合わせの誤差は咬合病の原因ですが普段は歯には影響が出ないようこの誤差を
顎をずらすことによりカバーし、歯が壊れないように守っています。
しかしストレスや疲れなどの影響でこの防御機能が働かなくなると違和感が増幅することを受けてメンタルの状態も悪くなり情緒不安定になります。
身体は様々なサインで異常を知らせています。

もし心当たりがあるようなら、咬合病が無いか専門医に確認してもらいましょう。

歯が使えなくなる第3の病気 ~咬合病から歯を守ろう~

治した歯が壊れる、歯が使えなくなる

 若いころは歯が良かったにもかかわらず、1本歯を失いその歯をブリッジで治した頃から歯医者さんに通う回数が増え始めるようになった。
治したブリッジがだめになった後は部分入れ歯となり、その入れ歯も支えになる歯が壊れてしまった。
歯がだめになるたびにその歯を抜いて新しい入れ歯を作り直すようになる。
これではいけないと、改心してしっかりと歯磨きも定期検診にも通うのだが歯は悪くなる一方。
年を取るとはこういうことかとあきらめてはいるものの、今まで食べられたものが、咬めないために食べられないのはやはりつらい。
現在では奥歯はすべて入れ歯になりました。
今後もさらに歯が無くなるのではないかと不安です。

実はこのような歯の悩みをお持ちの方が多いのが現状です。
むし歯や歯周病の問題が見つかればすぐに治療を受け、定期検診も受けているのに歯が壊れてしまうのはなぜなのでしょう?

それは咬合病(咬み合わせの不具合によって起こる様々な病的状態)に対する対処が行われなかったためです。

正しい咬み合わせと咬合病

上下の歯は正しい顎関節の位置ですべての歯が均一に接触することが大切です。
そのうえで下あごが動くときには前歯がその動きを円滑に誘導しなくてはなりません。
またこの誘導により奥歯は離れるようになっていることで、奥歯には無理な力が加わることが無く、咬み合わせが安定します。
このような状態が確保されていないと、この不調和な状態を改善するように身体の適応反応が働き、くいしばりや歯ぎしりをしてしまいます。
この時の無理な力が歯を壊すのです。

力負け

むし歯で修理した歯や神経を取り除いた歯は本来の歯の強さを持っていません。
さらに歯を失った状態を回復するためにブリッジや入れ歯を入れたとすると、支えとなる歯は本来のその歯の負担能力を超えた力を引き受けることになります。
1本の奥歯には100㎏以上もの力が加わることもありますから、治療を受けた口の状態ではすべての自分の歯が整っていた若いころと同じだけの咬む力を引き受けられません。
しかし治療後も以前と同じような使い方をしてしまうと歯が力負けしてしまい壊れてしまうのです。

食いしばりと身体の様子

正しい咬み合わせをしていても歯の限界以上に力を加えると歯は壊れます。
食いしばりや歯ぎしりをする場合には人の身体をコントロールする交感神経の働きが関わっています。
つまり交感神経が過剰に働く状態を持っている人は、歯が壊れるのです。

ストレスや疲労も原因ですが、栄養摂取の状態が悪くても交感神経は過剰に働きます。専門医の指導を受け体調管理を行うことも歯を守るために必要です。

咬合病の見つけ方

これらの咬合病は歯の状態を観察すれば容易に発見できます。

前歯を見て歯の磨り減りが強かったり、奥歯の歯ぐきから出ている歯の高さが低くなっていたり、歯を抜かなければならなくなった理由が、歯根が割れてしまったというような方は、この咬合病が発生しています。また顎の骨の一部が瘤のように膨らんできている方、顎関節症の方、頬の内側に圧痕がある方も要注意です。

早めに歯科医師に相談し、適正な咬み合わせの確保と自分に合った歯の使い方を確認することが咬合病から歯を守る方法です。

異常な歯の磨り減り
骨にできた瘤
頬の圧痕