治した歯が悪くなるのはなぜ?~歯を失うことなく、一生快適に使うための手順~

あなたの家が火事になりました!!

大変です。
あなたの家の台所から煙が吹き出し、家が火事になりました。
あなたはどうしますか?

①火事になって家が壊れているのだから、修理をしな
くてはいけない。だから大工さんを呼んで壊れてい
るところを治してもらおう。

②まずは家が壊れている原因である「火」を消さなく
てはならない。だから消防署に連絡して火を消して
もらおう

答えは簡単!

火事になれば小学生でも119番に電話をして、消防隊に来てもらい火を消すということはすぐにわかります。
これが誰もが考える当たり前のことですが、この当たり前のことを基準としてお口の病気のことを考えてみましょう。

今、歯医者さんで行われていること

口の中に穴が開きました。おそらくむし歯です。
痛みはさほどではないのですが、冷たいものが凍みます。
食事をすると食べ物がつまり、咬むと少しの痛みを感じます。虫歯じゃないかと感じた方はそこで歯医者に出かけ、問題解決へと取り組みます。

「先生、穴が開いてむし歯だと思うのですが?」

「どれどれ、見てみましょう」

「大きな穴が開いてます。虫歯ですね。では治療をしま
しょう」

と伝えられ、おもむろに麻酔をしてもらうと、そのあとはお決まりの、キィーン!、ガリガリ!。
虫歯部分を削り終えると、あとは型取りをして次回には作った歯が入ります。
歯を留めるときにはセメントを入れた冠を、カンカン! とたたいて浮き上がらないように装着すれば完成です。
でもこの様子何かと似てませんか?
そうそう、大工さんが家を修理するときの音とそっくりです。
実は歯の治療は、口の中で大工仕事をしているようなものなのです。

当たり前が、当たり前でない、歯科治療

勘の良い方は気づかれたのではないでしょうか?

口の中に虫歯ができるというのは、歯が壊れていることであり、口の中で火事が起こっているのと同じです。

ただし違いは、「火」ではなくて「虫歯菌」が原因であるという点です。
家が火事ならば、まずは火を消し、そのうえで壊れたところを大工さんが修理します。
ですから口の中でもまずは虫歯の原因、つまり虫歯菌という火を消さなくてはなりません。

しかし、歯医者さんでは火を消す前にキィーン!ガリガリ!カンカン! という大工仕事が優先されているのです。
火を消さずにその横で大工さんがいくら家を治しても、火はまた隣に燃え広がり、また家が壊れます。

実はこれと同じことが口の中で起こっており、次から次へと歯が悪くなるのです。

つまり、壊れた歯を修理する対症療法が歯科治療の主流であり、根本から治す原因療法として取り組んでいないことが治した歯が悪くなる理由なのです。

正しい治療の手順

歯を失わないための正しい治療の手順は、3つのステップで進められます。

まず最初にするべきことは、歯を失う原因である4つの病気【むし歯・歯周病・不良な治療・かみ合わせ】の原因を取り除くことです
このことにより今問題がない良い歯が助かり、合わせて病気の再発も防がれます。

2番目のステップは、お口全体を総合的に高品質で治すことです。治療は1本ずつ行ったとしても、歯を使うときは口全体で使います。
バランスよく治すことが重要です。

そして最後のステップは、メンテナンスをすることです
歯医者さんの定期健診は、早期発見・早期治療が目的ではなく、手に入れた健康な状態を維持するために行うという考え方で受診することが重要となります。
このような手順を正しく実践すれば、歯は人生の終わりまであなたの豊かな生活を支えてくるのです。

歯を失わないための治療の手順 ~歯科治療における原因療法~

 歯が悪くならない、
これって歯性の問題なの???

 歯を悪くしたくない
 入れ歯にはなりたくない
 しっかりとおいしく食事がしたい
 美しい口元で若々しくいたい

このような思いはすべての患者さんがお持ちです。しかしその期待どおりに歯を使い続けている人とそうではなく何度も歯医者さんに通っても歯が悪くなり続けている人もいます。
「歯性が悪いんだ」と諦めている方も多くおられるようですが、歯を悪くせず快適に使い
続けている人とはいったい何が違うのでしょうか?

歯を守る「原因療法」による歯科治療

従来の歯科医療は、悪くなった歯を治す、歯が無くなったところに歯を入れる、
といった修理を行うことが治療の中心でした。
このように発生した問題の改善を行うことにポイントを置いた治療(症状を治す)を対症療法と言います。
これでは歯の修理をしなくてはならなくなった原因が取り除けていないため、また次の問題が発生し、これが繰り返されると歯を失うことになります。
これに対し歯を悪くせず快適に使い続けている方では、この歯を失う病気の原因に
着目し、その原因を取り除くことから始めています。
これが歯科治療における原因療法で、この取り組みが歯を健康に保ってくれます。
ではこの原因療法は、どのような手順で進められるのでしょうか?

① 精密な検査
まず最初にすることは、歯を削ることではなく、現在のお口の中にどのような病気が発生しているのかを正しく認識することであり、そのために精密な検査をします。
歯を失う病気には、虫歯、歯周病、不良な治療、かみ合わせの問題という4つの種類がありますが、これらの病気を正しく理解することが基本です。

② 原因の除去
問題が明確になれば、病気の原因を取り除くことから始めます。虫歯や歯周病は口の中の細菌が原因であり、この細菌を取り除くにはご自身の歯磨き習慣を改善することと専門家によるクリーニングが必要です。これは予防プログラムとして展開されます。
また、かみ合わせの問題は歯に加わる力の調整であり、正しい顎関節の位置で均等に適正な力が加わるようにしなければなりません。これは予防咬合調整として展開されます。

③ 総合治療
次に行われるのが治療となります。
治療では部分的な補修をするのではなく、お口全体で一つの臓器であるという考えのもとに、バランスを整えながら全体にわたる治療を同時に行います。
これを総合治療といます。総合治療では、不良な治療が発生しないよう良質の材料を用い精密な治療が行われます。

④ メンテナンス
総合治療により健康なお口が回復できたならば、その状態を維持する取り組みを行います。
これがメンテナンスです。
患者さんの様子に合わせて個別のプログラムを計画し、年に2~6回程度のペースで実施されます。
歯が悪くならない方というのは、このような手順の原因療法による医療を受診されているのです。