噛む力から歯を守れ!~過大な力で歯が壊れるプロセス~

噛む力に負けると歯が壊れる

いつまでも使い続けたい自分の歯ですが、歯が壊れて使えなくなる時には必ず原因があります。
多くの場合虫歯や歯周病が原因といわれてきましたが、それらの病気の背景では力負けして歯が壊れるという状況が存在しています。
食事のときだけでなく、歯ぎしりや食いしばりといった行為でも歯には過度な力が加わり、時にその力は100kg以上にもなります。
この力から歯を守ることが大切なので、無理な力が加わって歯が壊れていく過程の中で早期にその状態を見つけることが重要です。
過度な力で歯が壊れる過程を知り、早めに無理な力が加わらないように対処することが大切です。

◆マイクロクラック

歯の表面はエナメル質という固い材質でできていますが、ガラスのようにもろい面
もあります。
大きな力が加わるとこのエナメル質にはひびが入ります。
これがマイクロクラックと呼ばれる状態です。虫歯はないのに歯が痛いというときにはこのひびが入っていることを疑います。
通常は再石灰化により修復されますが、過度な力が排除されなければ次の段階へと破壊が進みます。

マイクロクラック

◆知覚過敏

マイクロクラックがエナメル質を超えて象牙質にまで及ぶと歯に凍みを感じるように
なります。
これが知覚過敏の状態です。
多くの場合、歯と歯茎の境目あたりの薄いエナメル質に発生します。
樹脂の材料などで修復する処置がなされますが同時に歯に加わる無理な力を取り除くことが重要です。

知覚過敏

◆歯髄炎

クラックが歯の神経(歯髄)にまで達すると、大きな痛みを伴います。
これが歯髄炎です。
冷たいもので凍みる場合は軽症ですが、熱いもので疼くようになると歯の根の
治療が必要となります。

歯髄炎

◆アブフラクション

歯髄炎には至らないのですが歯と歯茎の境目に大きな欠けが発生する状態をアブフラクションといいます。
欠けが大きくなると歯が折れてしまいますので、修復と同時に歯への負担を軽減する処置が必要となります。

アブフラクション

◆歯の摩耗

歯と歯茎の境目ではなく、かみ合わせの面が過度にすり減る状態が摩耗です。
表面のエナメル質が失われると急速にこの摩耗は進行します。
摩耗したかみ合わせの面は相手の歯と接触する面積が増えるため、さらに摩耗が進みやすくなります。
この状態になると歯に冠を入れてエナメル質を人工的に回復させる処置となります。

歯の摩耗

 

 

 

 

 

◆歯の破折

さらに大きな力で摩耗が進むと歯が割れてしまいます。
歯冠部の小さな欠けの場合は人工的なエナメル質の再生で回復できますが、破折が   歯の根にまで及んだ時にはその歯を使うことが困難となり、歯を抜かなくてはならなくなります。
歯磨きだけでは歯を守ることはできません。
必ず歯に加わる力(咬合)を正しく整えてもらいましょう

歯の破折

 

うまく咬めないのはなぜ ~歯を守るための咬み合わせ治療~

歯並びと咬み合わせは違う

歯並びを整えることが咬みあわせを良くすることだと思い込んでいる方がおられます。この理解は間違いで正しい理解は、歯並びとは「歯同士の位置関係」の事であり、咬み合わせとは「上下の歯の接触関係」の事です。

ですから、歯並びが良くても咬み合わせが良いとは言えませんし、また歯並びが悪くても咬み合わせには問題がない方もおられます。

確かにきれいな歯並びであることは良い咬み合わせが完成するための良い条件であることに疑いがありませんが、咬み合わせを評価するときには正しい咬み合わせの基準を満たしているかがポイントとなります。

正しい咬み合わせでは3つの要素が満たされていなくてはなりません。

 ① 顎関節が正し位置にある状態で上下のすべての歯が
  同時に咬みあうこと。

 ② 顎関節からできるだけ遠い前歯で顎の動きを円滑に
  道案内していること。

 ③ 下顎がこの道案内により動き始めると同時に奥歯が
  離れること。

この要素が満たされていると、咬み合わせが原因の不快な症状や病気が発生することはなく、歯は壊れることがありません。

良くない咬みあわせで発生する症状

咬み合わせが悪いことが原因で発生する身体の不調には、肩こり、頭痛、腰痛、顎
関節症、知覚過敏、開口障害、歯の破折や摩耗、歯の動揺など、数多くあり、これら
が引き金となりほかの病気を発症することもあります。

しかし多くの方がこれらの症状が咬み合わせにより発症しているとは理解していません。
また歯科医師の中でもこれらの症状が咬み合わせと関連していることを知らなかったりします。

咬み合わせによる問題は上下の歯の接触関係により発生しますが、その接触関係は30ミクロンのレベルの誤差が問題となります。
髪の毛の太さが70ミクロンといわれていますから、いかに繊細な問題かをお分かり頂けるでしょう。

ヒトという動物は2足歩行をすることで進化しましたが、同時に大変重たい頭を頸の上にのせて過ごすという宿命も受け入れることになりました。
このため咬み合わせがずれて上下の歯が接触したときに顎の位置が少しずれるだけでも、重たい頭をバランスよく乗せておくために重心が移動し、このことがバランスのとれた筋肉の働きを損ない、筋肉の疲労を引き起こし、これが肩こりや頭痛となるのです。

また、良くない咬み合わせを自力で改善しようとする適応反応では、歯ぎしりや食いしばりによってずれのある個所の歯をすり減らそうとします。
そのため口を閉じる筋肉を過剰に緊張させてしまい、これもまた筋肉の疲労を引き起こすことになるのです。

咬み合わせ治療の方法

咬み合わせの治療には原因療法として3つの方法が、対症療法として1つの方法があります。自分の歯で正しく咬み合うように原因療法として取り組む場合には、

①上下の歯を削って調整する

②歯に冠を作成し咬み合わせ面の形を修正する

③歯の位置を動かす

という方法です。

もしこれらの方法が使えない場合には、対症療法としてマウスピースを活用します。

歯に冠を入れたり、入れ歯を入れたときに上下の歯の咬み合わせがどことなくしっくりこなかったり、また咬みにくい場合は、咬み合わせが適切ではありません。