うまく咬めないのはなぜ ~歯を守るための咬み合わせ治療~

歯並びと咬み合わせは違う

歯並びを整えることが咬みあわせを良くすることだと思い込んでいる方がおられます。この理解は間違いで正しい理解は、歯並びとは「歯同士の位置関係」の事であり、咬み合わせとは「上下の歯の接触関係」の事です。

ですから、歯並びが良くても咬み合わせが良いとは言えませんし、また歯並びが悪くても咬み合わせには問題がない方もおられます。

確かにきれいな歯並びであることは良い咬み合わせが完成するための良い条件であることに疑いがありませんが、咬み合わせを評価するときには正しい咬み合わせの基準を満たしているかがポイントとなります。

正しい咬み合わせでは3つの要素が満たされていなくてはなりません。

 ① 顎関節が正し位置にある状態で上下のすべての歯が
  同時に咬みあうこと。

 ② 顎関節からできるだけ遠い前歯で顎の動きを円滑に
  道案内していること。

 ③ 下顎がこの道案内により動き始めると同時に奥歯が
  離れること。

この要素が満たされていると、咬み合わせが原因の不快な症状や病気が発生することはなく、歯は壊れることがありません。

良くない咬みあわせで発生する症状

咬み合わせが悪いことが原因で発生する身体の不調には、肩こり、頭痛、腰痛、顎
関節症、知覚過敏、開口障害、歯の破折や摩耗、歯の動揺など、数多くあり、これら
が引き金となりほかの病気を発症することもあります。

しかし多くの方がこれらの症状が咬み合わせにより発症しているとは理解していません。
また歯科医師の中でもこれらの症状が咬み合わせと関連していることを知らなかったりします。

咬み合わせによる問題は上下の歯の接触関係により発生しますが、その接触関係は30ミクロンのレベルの誤差が問題となります。
髪の毛の太さが70ミクロンといわれていますから、いかに繊細な問題かをお分かり頂けるでしょう。

ヒトという動物は2足歩行をすることで進化しましたが、同時に大変重たい頭を頸の上にのせて過ごすという宿命も受け入れることになりました。
このため咬み合わせがずれて上下の歯が接触したときに顎の位置が少しずれるだけでも、重たい頭をバランスよく乗せておくために重心が移動し、このことがバランスのとれた筋肉の働きを損ない、筋肉の疲労を引き起こし、これが肩こりや頭痛となるのです。

また、良くない咬み合わせを自力で改善しようとする適応反応では、歯ぎしりや食いしばりによってずれのある個所の歯をすり減らそうとします。
そのため口を閉じる筋肉を過剰に緊張させてしまい、これもまた筋肉の疲労を引き起こすことになるのです。

咬み合わせ治療の方法

咬み合わせの治療には原因療法として3つの方法が、対症療法として1つの方法があります。自分の歯で正しく咬み合うように原因療法として取り組む場合には、

①上下の歯を削って調整する

②歯に冠を作成し咬み合わせ面の形を修正する

③歯の位置を動かす

という方法です。

もしこれらの方法が使えない場合には、対症療法としてマウスピースを活用します。

歯に冠を入れたり、入れ歯を入れたときに上下の歯の咬み合わせがどことなくしっくりこなかったり、また咬みにくい場合は、咬み合わせが適切ではありません。