体の不調は、口の中の病気から ~2足歩行が引き起こした睡眠時無呼吸症~

ヒトという動物

哺乳類に分類されるヒトという動物は、2足歩行をすることが大きな特徴です。
そしてこの2足歩行をすることによりほかの哺乳類と大きく異なる体の構造を持つこととなります。
それは口と食道の間の部分「咽頭」の中央部分、中咽頭に現れています。
ここは空気の通り道と食べ物の通り道とを共有している部分ですが、2足歩行をするようになったことで顎の大きさが小さくなり、そのため筋肉の塊としてこの顎の中に納まっている舌が、後方の中咽頭を狭くしているという構造です。
そしてこの中咽頭のスペースを狭くする舌の存在が、睡眠時無呼吸症という病気を引き起こすのです。

睡眠時無呼吸のおこり方

ヒトという動物ではほかの哺乳類と異なり言語を持っていますが、この言語を発達させたのが複雑に動ける舌の存在です。
この舌は常時小さく固まった状態で顎の骨の中に納まっていますが、現代人では顎の大きさが小さくなる方向に進化したことや、肥満などにより中咽頭自体が圧迫されて狭くなったような場合において、この中咽頭を舌が塞いでしまうのです。
特に仰向けでの睡眠時には、重力によっても舌は後方に押しやられてしまいますから、この状態が強く発生することになるのです。

睡眠時無呼吸がもたらすリスク

睡眠時無呼吸症を発症するようになると、さまざまな命を脅かす問題のリスクが高まります。
睡眠時無呼吸症を発症すると、意に反して昼間に突然居眠りをしてしまうということが起こります。
そのため車などの運転中にこの状態になることで、交通事故を起こしてしまうのです。その発生確率は、健康な人の2~7倍になると言われています。
また、生活習慣病である、高血圧・高脂血症・糖尿病・脳卒中の重症患者の場合では、数年後の死亡率が40%を超えるというデータが得られました。

睡眠時無呼吸を予防するために

あごが小さく成長してしまうことでこの病気が起こることを回避するためには、体の成長期にある子供たちの顎の大きさが、正常な歯並びができる程度にまで拡大させることが効果的です。
また歯列矯正では、歯を間引くことがよくありますが、この方法も危険な治療法と考えられるため慎重に検討されるべきでしょう。
もし顎の成長が終わった後にこのような症状が発生した場合には、顎を大きくはできませんから、睡眠時にのみ下顎の位置を前方に固定するマウスピースの活用も予防には効果的です。
肥満を抑え、適切なバランスのとれた体形を維持するように努めることも、この病気の回避につながります。

良く眠れない、生あくびがよく出る、いびきをかくなどの症状がある方は、睡眠時無呼吸症になっているサインと受け止め、この病気がもたらすリスクを避けるため、早めに歯科医師と相談されることが賢明です。